スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

予想外…

みなさま、こんにちわ。

失敗したわけじゃあありませんが…先にこっちの創作が仕上がってしまいました。
えーと…いつか書いてみたいと思っていた『missing you』の続編です。

先行の2作はみちるさん視点で書かせて頂きました。
最終回にはちびうさちゃんも出てきます。

では、久しぶりの長編(といっていいものか)お楽しみ頂ければ幸いです。





―be with you―




うさぎが目を覚ました翌日。
私はいつものより早くに目が覚めた。

まだ静かな寝息を立てる4人を起こさないよう、そぅっとベッドを降りた。
カーディガンを羽織り、室内スリッパを履いて静かに部屋を後にする。

「さてと、朝ご飯の支度、急がなくちゃ…」

なにせ今日から数日は5人分の朝食を用意しなければならない。

自室で着替えを済ませ、髪を梳いて身支度を整える。
その間も胸が高鳴っているのを感じる。

知らず零れる笑み。
ふと見上げた鏡に映ったその顔は、とても幸せそうに微笑んでいて。
まるでプレゼントを心待ちにする子供のよう。

「やあね、私ったら…」

くすり、と肩を竦めて部屋を出ると、眠っていた客間から出てきたせつなと目が合った。

「おはよう、せつな」

「おはようございます、みちる」

「先に支度してるわね」

「私もすぐに行きます」

静かに階段を下り、キッチンへ。

冷蔵庫を覗いて献立を考える。

うさぎは何でも美味しそうに食べてくれるから作り甲斐がある。
幸せそうに食べ物を口に運ぶ彼女を思い出し、またひとつ笑みが零れた。

「随分楽しそうですね」

慣れ親しんだ声に振り返ると、せつながエプロンを着ながら微笑んでいた。

「あら、そういうせつなだって」

「だって楽しいですから」

悪戯っぽく言うせつなと2人で顔を見合わせ笑い合う。

そう。こんな日が来るなんて思いもよらなかった。

ずっとうさぎへの気持ちを伝えられず、戦士としての使命と自分の想いの狭間で悩んでいたはるか。

日ごとに積み重なっていく愛しさに苦しんで。
そのうち爆発してしまうのではないかと危惧するほどの状態だった。

それに拍車をかけたのが、数ヶ月前に母星への帰還を果たしたスリーライツ、星夜君たちの存在。

顔を合わせる度に一触即発は当たり前。
互いの正体が判ると、遂にうさぎへの接触さえ赦さなくなって。
それでも最後の最後で分かり合えたのは、やはり私たちのプリンセスのお蔭。

銀河中を巻き込んだ戦いがなんとか終焉を迎えて何もかもが元通り。

ただ、今度はギャラクシアに奪われていたスターシードを取り戻した衛さんの存在がはるかを足止めさせた。

確かに衛さんがいない間、献身的にうさぎを支えたのははるかと星夜君だった。
目に見えて憔悴していくのを見ていられず、何度かショッピングやお茶に誘ったのを覚えている。

例えそれが一時の現実逃避だと判っていても、うさぎは一切それを口に出さなかった。
私たちを気遣って、何度も『ごめんなさい』と『ありがとう』を繰り返して気丈に笑っていて。
そんな痛々しい表情がようやく消えて、これからと思った矢先だった。
うさぎが眠りから覚めなくなったのは。

それがまさかはるかへの想いに対するジレンマだったとは予測できなかったけれど。

こんな嬉しいサプライズがあるだろうか。

久しぶりに見たはるかの寝顔はとても穏やかで、柔らかい微笑すら浮かべていて。
その表情を引き出したうさぎに軽い嫉妬すら覚えた。

そこへ。

「おはよ、みちる、せつな」

「あら、おはよう、はるか。
 今日は早起きさんなのね」

「おはようございます、はるか」

私の心を波立たせていた張本人が、嫌味をものともせずにいつもの席に着いた。
その表情が明らかに崩れていて、また子憎たらしいと言ったらない。

私たちがどれだけ気を病んだか教えてしまいたい気分になる。

「良く眠れたようね?」

「これまでにないくらにね」

「あら、ご馳走様」

「なにみちる、妬いてんの?」

こういうところがはるかの嫌なところ。
むっとして視線を逸らすと、フライパンの中でジュージューいっている卵をかき混ぜる。

「あまりみちるをからかうものじゃありませんよ、はるか」

せつなが嗜めたって、悪びれもせずに「ごめん」と肩を竦めるだけ。

本当に昨日までの悲壮な表情は何だったのかしら?

私だって、うさぎをこの家に運んだ次の日に予定されていたコンサートのことですごく悩んだ。
しかし、前々から決まっていたことだし、スポンサーに迷惑はかけられない。

はるかやせつなに説得され、後ろ髪を引かれる思いで出立した苦い記憶。
今思い返してみれば、演奏は散々だったかもしれない。
プロの演奏者として扱われている上は、それ以上の実力を発揮しなければいけなかったのに…

「みちる?」

「あ、ごめんなさい」

いけない。

回想に囚われて沈みそうになる心を引き上げる。
今日からは楽しい日々が始まると言うのに、はるかたちに気を遣わせてはダメね…

手元のフライパンではいい具合に半熟になったスクランブル・エッグが出来上がっていた。
慌てて火を止めて中身を白いお皿に移す。
彩り良くレタスとプチトマト、ソーセージを盛り付け、せつなが焼いてくれてたトーストと共にはるかの前に差し出した。

「ありがと」

「どういたしまして」

「そう言えばうさぎさんとほたるはまだ寝ているのですか?」

「うん、まだぐっすり」

「あら、良いの?
 ほたるはともかく、目が覚めて貴方が傍にいなかったら、お姫様が悲しむんじゃなくて?」

「あんまり気持ち良さそうに寝てたから、起こすに忍びなくて」

それはそうだけど…

昨日の今日ではるかがいなかったら夢だったんじゃないかと言い出しそうな気がするのだけど…

そんな私の胸中を知らず、はるかは紅茶を口に含み、トーストをひと齧り。

「そんな顔しなくても、出かける前に起こしに行くよ」

「―!?―」

顔に出ていたのだろうか。
思わず頬に手を当てて、顔を背けた。
横目で彼を盗み見れば、苦笑しながら柔らかな微笑が返された。
悔しくて、今更のように恨みがましく睨んでみる。

「だめだよ、そんな顔しちゃ。綺麗な顔台無し」

苦肉の策もあっさり一蹴されてしまった。

「それとその前に、楽しい日の朝になに悩んでるのか聞かせてもらうよ」

「―!―」

考え事をしていたことを見抜かれ、言葉を失う。
結局はるかにはいつまでたっても敵わない。
そんなことを思っていると、

「私も先程から気になっていたのですよ」

せつなにまで指摘を受けてしまった。
つくづく隠し事が苦手な自分に嫌気がさす。

「みちる?」

こういう時のはるかの追求はかなりシビアで。
話せば自分が納得がいくまで話を聞いてくれるし、アドバイスもしてくれる。
けれど、こればかりは話すことに躊躇いがあった。

「ごめんなさい、はるか…今回ばかりは話せそうにないわ…」

「僕とうさぎが絡んでるから?」

「!?」

ばれている!

伏せていた顔を上げると、厳しい顔をしたはるかの視線とかち合った。

思わず握り締めた手が震える。

鼓動が早鐘を打って、まるで全身が心臓になったかのように鳴り響く。

と。

静かに添えられたのはせつなの柔らかな手。
ほっそりとしているのにあたたかなその感触が私はいつも好きだった。
幼い頃、欲しくても手を伸ばせなかった母親のぬくもりのようで…時々泣きたくなってしまう。

「せつな…」

「一昨日のコンサートのことでしょう…? みちるが気にしているのは」

息苦しさを抑え込んで小さく頷く。

「なら心配要りませんよ」

事も無げに言って、せつなは優しく微笑んだ。
どうしてこうもはっきり言ってしまえるのだろう。
私は不思議に思って首を傾げた。

「あのコンサート、実はラジオで中継されていましてね、うさぎさんを寝かせていた部屋で聞いていたのですよ」

「勿論、僕も一緒にね」

「はるか…」

「確かに今回のコンサートのテーマは『鎮魂』でした。
 しかし、うさぎさんはみちるのヴァイオリンが好きでしたから、何かのきっかけにと思って…」

「『AVE MARIA』、良く弾けてたと思うよ。
 うさぎへの気持ちが前面に出ててさ、胸が締め付けられたよ…」

はるかの視線はとても穏やかで、責める素振りはどこにもない。

いつだって私の演奏には素直な感想を言ってくれる。
時折厳しいことも言われるけれど、それは私を思ってくれる証だから真摯に受け止めてきた。

なのに…

「そんな捨てられた子猫のような顔をしないで、みちる…
 素直な感想だよ。みちるはうさぎに早く目覚めて欲しくて、こんなに待っている人がいることを伝えたかったんだろ?」

「……っ……!」

溢れた涙が視界を歪ませ、頬を滑り落ちた。
せつながそっと私を抱き寄せてくれる。

空港から飛ばしたタクシー、もどかしく靴を脱いで、はしたなくもリビングに荷物を投げ捨てて着替えもせずに駆け込んだ部屋。
そこには出かける前と変わらない、本当に寸分違わぬ光景があって。
祈りが届かなかったことを知った。

せめてもの願いも叶わなくて。

微かな希望も消え失せた。

そこには『絶望』の2文字が混沌と化して横たわっているようで。
全てを覆い尽くしそうな暗闇に背筋が冷えたのを思い出した。

「君がどんな想いで弾いてたかくらいわかるよ。
 今まで何度君の演奏を聞かせてもらったと思ってるんだよ」

「そうですよ、みちる。
 貴女がうさぎさんのことを、私たちのことを大切に思っていることは、私たちが一番わかっているつもりです」

あぁ…私、こんなにも…

思われていたことを今更のように実感して胸が締め付けられた。

「さ、そんな顔してたらお姫様が泣くから、顔洗っておいで」

「あの、はるか…せつな…」

『ごめんはなし(ですよ)』

珍しく2人の言葉が重なった。
そのことに驚いて目を見開いたら涙が止まった。
次いで私たちは顔を見合わせ笑い合った。

「ありがとう…」

素敵ね、家族って…

私は洗面台へ向かいながらまたひとつ、笑みを零さずにいられなかった。



vol 2に続く。





関連記事
スポンサーサイト

<< be with you  VOL.2 | ホーム | 春ですねぇ… >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 ホーム 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。